前編では公的介護保険を利用した在宅の場合の費用のあらましについて述べました。
では、施設に入居した場合はどのようになっているのでしょうか。
介護を受ける施設の種類
公的介護保険のサービスを利用する入居型施設には数種類あり、内容や条件、サービスの費用パターンも異なります。
・ 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
要介護3以上 在宅介護が困難な65歳以上の人が対象。長期間の待機が必要な場合がある。終生の居住が可能。
・ 介護老人保健施設
要介護1以上 病状が安定している65歳以上の人が看護や介護を受けながら自宅復帰を目指す施設。入所期間は原則3か月が目安。
・ 介護療養型医療施設
要介護1以上 長期療養を必要とする人が治療や介護を受ける施設。2024年3月末までに廃止、後述の介護医療院等に移行する予定。
・ 介護医療院 長期療養のための医療と介護を提供する施設。2018年4月よりスタート。
・ 介護付き有料老人ホーム 民間の有料老人ホームのうち、介護付の施設。
・ 認知症グループホーム 要支援2以上、要介護1以上で認知症の65歳以上の人が5~9人で共同生活を送りながら介護サービスや機能訓練を受ける。
地域密着サービスを利用するので、施設所在地に住民票があることが必要。
施設サービスの場合の費用負担
1. サービス費
・・・施設サービスのサービス費用は施設や居室タイプ、要介護度に応じて金額が決められていて、1割~3割の自己負担になります。
2. 食費
3. 居住費
・・・食費と居住費は全額自己負担ですが基準費用額が決められており、所得が少なければ軽減措置が受けられます。
4. 日常生活費
・・・全額自己負担です。
≪ 計算例:要介護5の方 ≫
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入居、ユニット型個室を利用(軽減措置無し)
日常生活費が10,000円 の場合
月額 | 自己負担1割 | 自己負担2割 | |
サービス費 | 約275,000円 | 約27,500円 | 約55,000円 |
高額介護サービス払い戻し (限度額44,400円の場合) |
— | 0円 | △10,600円 |
食費 | 約42,000円 | ||
居住費 | 約60,000円 | ||
日常生活費 | 10,000円 | ||
合計月額費用 | 約139,500円 | 約156,400円 |
※ この例は概算です。ここに各種加算がされる場合があります。
介護付き有料老人ホームの費用負担
有料老人ホームの入居費用は、
・ 入居一時金:0~数億円
・ 月額利用料(食費、居室、光熱費など):10~40万円
と施設によって大きな幅があります。
介護のサービス費用は、介護保険の特定施設入居者生活介護を利用するので1~3割負担で利用することができます。こちらも要介護度ごとに金額が決められています。いずれにしても、かかる費用は施設との契約内容により相当のばらつきがあります。
認知症グループホームの費用負担
認知症グループホームにかかる費用は、
・入居一時金:0~100万円
・月額利用料(介護サービス費、食費、居室、その他):10~30万円
と、やはり施設によって幅はありますが有料老人ホームほどではありません。
しかし、看護体制や看取りができるかなど、施設によっては終生住み続けられない場合があります。
支払っている平均額は?どれくらい準備すればいい?
生命保険文化センターの調査によれば、過去3年間に介護経験がある人が、どのくらいの期間介護を行ったのかを聞いたところ、介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均54.5ヶ月(4年7ヶ月)となっています。
また、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、一時費用(住宅改修など)の平均が69万円、月々の費用が平均7.8万円です。
この数値をもとに単純に合計の平均額を計算してみると、
で、約500万円が介護費用のめやすということになります。
しかし、この数値はあくまでも平均値であり、
・在宅での介護、施設での介護が混在している値である
・介護期間の平均は4年7ヶ月であるが、期間にばらつきがあり、10年以上のケースも14.5%存在する。
ということから、単純に500万円準備すれば安心とは言い切れません。
実際に、同じく生命保険文化センターの調査で、世帯主または配偶者が要介護状態となった場合に必要と考える初期費用の平均は242万円、月々の費用の平均は16.6万円、介護が必要と考える期間の平均は167.2ヶ月(13年11ヶ月)と、考えられている費用は上記の平均値より大きく上回っていることがわかります。
介護費用の実際には、
・どこで介護をするのか?(在宅、施設)
・介護の担い手(親族など)が近くにいるのか?
・要介護度
・認知症発症の有無
等、必要額を左右する要件が多くあります。
今後制度も変わっていくことも考えると、今すぐに正確な必要額は把握しづらく、準備の計画も立てにくいでしょう。
そんな中でも今からできることには、
・老後費用を考えていく際、介護の可能性を踏まえて検討する。
・そのために、情報を受けやすい状況にしておく。制度を知る。
・住居を考える際に、将来のことも念頭に置いてみる。
・介護に具体的な希望があるなら、意思表示の準備をしておく。
等が挙げられます。
また、経済的に準備をするほかにも「健康寿命」(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)をなるべく伸ばして、介護期間自体を減らせるようにすることも今から意識できますね。
・ 厚生労働省|介護サービス情報公表システム
・ 生命保険文化センター「ひと目でわかる生活設計情報」
・ 生命保険文化センター「生活保障に関する調査」平成30年度