投資を始めたいと思うけれど「株式投資や投資信託など、選択肢がたくさんあって決められない」「証券会社が多すぎてどこにすればいいの?」「積極的に資料請求をしたけれど、いざ資料を見たら比較できずにかえって迷ってしまった」などと悩んでしまいスタートできない人は多いと思います。投資を始める前に悩みを解消して、自信をもって投資の第一歩を踏み出したいもの。考え方のコツをご紹介します。
投資ってどんなものがあるの?
投資未経験者がいざ投資を始めようとしたとき、最初の一歩をどう踏み出すべきか迷ってしまうことは少なくありません。その理由として、投資の選択肢が幅広いことが考えられます。投資といえば株式投資や投資信託が一般的ですが、外貨積立や保険も資産運用として活用できます。また、今は無理でも将来的には信用取引やFXへの意欲をもっている人もいるでしょう。
また、最近は「投資には消極的だが節税効果が得られるiDeCoやNISAには興味がある」と考えている人もいるでしょう。しかし、iDeCoとNISAのどちらが得かを比較しているうちに迷宮に入り込んでしまい、決めきれないという方も少なくありません。なぜなら、自分に適した投資の方法というのは、好みや自己資金額などの個々の状況によっても適切な投資商品は変わってくるので、投資商品だけを比較していても答えは出ないからです。
こうしてみると、数ある投資商品・方法のなかから適したものを選ぶのは意外と難しそうですね。自分に適した投資商品・方法を見つけるためには、後述する投資の目的を決めることと、「何を」「どのように」運用したいのかを考えることが大切です。
投資方法の基本1:「何を」
投資の対象は何でしょう。株式投資や投資信託、外貨預金、などが一般的な投資対象ですが、先物取引やFXなどもあります。最初は株式投資や投資信託を選択肢に考える人が多いですが、リスクを抑えたいなら国債や保険も視野に入れて絞ってみてください。
投資方法の基本2:「どのように」
運用の意思決定はどのように行いたいでしょうか。大まかには自分主体で行いたいか、人に任せたいかに分かれます。人に任せたい場合はインターネットを利用した取引よりも対面で相談できる窓口を利用するほうがおすすめです。もしくは、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)やロボアドバイザーの力を借りてもいいでしょう。
本当は「自分主体で資産運用をしたいけれども、商品数が多すぎるので選べるか不安」という人は、商品数の限られている「iDeCo」や「つみたてNISA」を利用することで希望する投資方法を探しやすくすることができます。
上記2つの基本を整理しておくと、目的に合わせて投資方法や投資先を決める際に、いちいち迷わなくてすみます。各項目で優先順位の高いものや、興味のあるものを挙げておきましょう。
さらに、投資資金についても確認しておきます。すでにある預貯金を初期費用として割くのか、それともゼロからの積み立てで投資資金を捻出していくのか。収入や預貯金に合わせて考えてみてください。
投資の目的は?ニーズによって投資の方向性が決まってくる
投資はその目的やゴールによっておのずと「何を」「どのように」の方向性が変わります。漠然と始める人もいますが、目標がはっきりしているとやりがいがありますし、運用効率も上がるものです。具体例をご紹介しますので、ご自身に当てはめながら読み進めてみましょう。
ケース1:「老後資金をじっくり貯めたい」なら
毎月少しずつ資金を出して将来の老後資金を貯めたいなら、長期投資を前提とした「iDeCo」や「つみたてNISA」がおすすめです。税制優遇がある点もポイントです。
iDeCo
・ 拠出額が全額所得控除の対象で、運用益も非課税となります
・ 将来受け取り時にも「公的年金等控除」、もしくは「退職所得控除」が受けられます
・ 拠出額は自分で設定(月々5,000円以上1,000円単位)可能です
ただし、会社の企業型確定拠出年金の規約でiDeCoへの加入が認められていない場合は加入できません。また、金融機関によって口座の管理手数料や取扱商品が異なります。毎月かかる口座管理手数料は運用益も左右しかねないので、しっかりチェックしましょう。
つみたてNISA
・ 年間40万円までの投資に対し、運用益(売却益や分配金)が非課税となる
・ 非課税期間は最長20年だが、自身の判断で休止も可能
ただし、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限られています。
20代や30代の若い方なら定年まで時間があるので、収入額から積立に回せる額を毎月投資することが一般的です。40代50代と、定年が近くなっている人なら目標額から逆算して毎月いくら積み立てるか決定していきましょう。
ケース2:「手持ち資金で生活を楽しみたい(インカムゲイン目的)」なら
投資によって支出に回せる資金を増やしたい人は株式の優待・配当、投資信託の分配金(インカムゲイン)を狙うのがいいでしょう。株式投資配当は企業の業績によって増減がありますが、株式情報の「配当利回り」で実績を確認できます。投資信託は「分配金」情報を確認します。
配当利回り
・ 1株あたり、1年間でどれだけの配当を受けることができるかの数値です
・ 株価が10万円の場合、配当利回り実績が1%なら1,000円、2%なら2,000円の配当があったことになります
分配金
・ 元本を上回った利益分が分配される普通分配金と元本の一部払い戻しである特別分配金があります。特別分配金の場合は元本が減ることになるため、多く出たとしてもトータルではマイナスの場合があります
配当や分配金の割合はそう多くなく、投資の恩恵を実感するには初期投資をある程度確保する必要があります。すでに現金の蓄えがある人に向いている投資方法です。
この手法を行いたいが、手持ちの資金がない人の場合は、先行して資金を作ります。堅実に預貯金を積み重ねる方法と、投資で増やす方法があります。預貯金のほうが安全ではありますが、将来的に投資を続けていくつもりであれば、経験値を上げるために少額でも投資を始めておくことをおすすめします。
ケース3:「投資で資金を増やしたい(キャピタルゲイン狙い)」なら
投資をすることでお金を増やしたい人は、売買を活発に行う積極投資がいいでしょう。売却益(キャピタルゲイン)を得るには株式投資やETF(上場投資信託)など、時価でリアルタイムに取引できる投資方法が向いています。銀行ではなく、証券会社で口座を開設しましょう。
取引では購入・売却価格を指定する「指値注文」や、値段を指定しない「成行注文」があります。また、売買期限を「今日中」「今週中」など設定することも可能です。さまざまな売買ツールがあるため市場の変化に合わせてさまざまな売買を行えます。次の例のように、目先の損得にとらわれず、市場の流れを見極めた投資が可能です。
・ この株はそろそろ上がりそうだから、今のうちに買いたい。多少購入価格が高くなっても値上がり益が得られるはず
・ 保有株が下がりそう、多少の損をしても大きな損になる前に早く売ってしまおう
このような判断をするには経験が必要ですが、経験を積み投資上級者になればなるほど投資の楽しみも膨らみそうです。
売却益を得るためには迅速な行動が欠かせないため、インターネットやスマホで取引できる証券会社を選びたいです。取引画面の見やすさや使い勝手も大切です。証券会社に迷ったら、複数の会社で口座を開設して一番合ったものを利用する方法を試してみましょう。
残念ながら、当初から高リターンを狙うのは難易度が高いといえます。当初は資金を抑え、ときには損もしながら徐々に投資額を増やしていってください。投資初期におすすめなのが通常NISAです。次に示すのが通常NISAの概要です。
・ 年間120万円までの投資に対し、運用益(売却益や分配金)が非課税となる
・ 開設できるのは1人1口座。開設期間は最長5年( 投資可能期間:2023年まで / 2019年3月現在 )
NISAは運用益が非課税ですので、その分収益が底上げされることになります。また、非課税枠は新規投資で120万円までと制限があるので、過剰な初期投資の防止にもつながります。投資枠を超えると、同じ銘柄への再投資でも非課税にならない点に注意しましょう。投資初心者のうちはNISA中心で運用し、徐々にNISA以外の通常投資も増やしていきます。着実に経験を積み、投資上級者を目指したい人に最適です。
ケース4:「投資は怖いので、試しにやってみたい」なら
投資の向き不向きを確かめたい人や感触を確かめたうえで本格的に始めたい人は、気軽に始められるインターネット証券で口座開設するのがおすすめです。
また、投資対象も価格が大きい傾向にある株式投資よりも投資信託がいいでしょう。投資信託のなかには1,000円やそれ以下の金額から始められるものもあります。少額の投資でも始めやすい点もインターネット証券のメリットです。
株式投資は株価の上下が投資信託よりも激しい傾向にあるので、その点からもお試しでやるのには不向きといえます。また、このケースの場合解約のしやすさも重要です。iDeCoは原則60歳まで、ジュニアNISAは原則20歳まで途中解約ができないので、注意しましょう。
ケース5:「預貯金以外の選択をしたいがリスクは負いたくない」なら
資産を増やすことよりも、減らないことを重視するならリスクの小さい国債や社債が適しています。一括購入が原則ですが、自己資金に応じて購入できます。
個人向け国債
・ 満期は3年・5年・10年のものがあります
・ 購入金額は最低1万円から1万円単位で設定できます
・ 金利は変動・固定のものがありますが、年利0.05%の下限が定められています。保有期間に応じた年利を受け取ることができます
・ 発行後1年経過すれば途中換金も可能です。ただし、途中換金時は直前2回分の利子相当額が差し引かれます
社債
・ 特定の会社が発行する債権です
・ 満期までの期間や利回りは社債ごとに異なりますが、国債よりも利回りは高めです
・ 国債と同じように、満期に償還することも、途中換金も可能です
国債ならば、証券会社以外に郵便局や一部の銀行で購入可能です。社債の場合は証券会社の口座を開設します。口座開設の手間をかけたくないなら国債に絞ってみましょう。
このタイプの人が店舗のある銀行で国債を購入するなら、窓口で相談できる点もポイントが高いですね。
投資方法が決まったら、口座開設に進もう
先の事例を参考に、投資方法の方向性が決まったら希望に合わせて口座開設に進みましょう。投資対象で考えると、投資信託を希望するなら銀行・証券会社どちらでも問題ありませんし、もしも株式投資にも投資したいなら証券会社のほうが一般的です。証券会社ならFXや先物投資など、その後の選択肢の幅も大きくなります。それでは銀行と証券会社の違いをご紹介しましょう。
早く、手間なく口座開設したいなら銀行がおすすめ
すでに利用している銀行を選べば、特別に口座開設の必要がなく手続きが楽です。店舗のある銀行の場合は窓口で相談することもできます。ただし、銀行の場合は投資信託が運用のメインになるでしょう。株式投資やFXなどを行いたい人は銀行以外の選択肢を考えなくてはなりません。
スムーズさが重要なら口座のある銀行の証券口座を開設する手もあります。例えば楽天銀行と楽天証券、SBIネット銀行とSBI証券……などです。銀行口座と証券口座が連動していて、資金移動がしやすいメリットもあります。
証券会社を選ぶときはどう比較する?
証券会社は大きく「店舗があり対面取引が可能な大手証券」と、「インターネットで取引できるネット証券」の2種類に分かれます。大手証券は売買手数料が高い傾向にありますが、対面や電話で手厚いサポートを期待できます。ネット証券は、ネット環境とパソコンがあればいつでもどこでもすべての手続きが可能です。
手数料や商品、サービスは証券会社ごとに異なりますので、多方面で比較したうえでベストな会社を選ぶのは大変です。まずは、サポート力を重視するなら大手証券会社、利便性とコストの低さが大切ならネット証券と考えてください。さらに最適な証券会社を選ぶためポイントは、比較ポイントを一つに絞ることです。「とにかく手数料の低いところ」「土日も電話で相談できるところ」「ネット画面が見やすいところ」などです。
なお、頻繁に取引するのでなければ手数料の高さはそんなに大きな問題ではありません。「手数料が高い」と聞くとそれだけで大手証券を敬遠してしまう人も多いですが、迷うようなら手数料をいったんわきに置き、特定のサービス面だけで良しあしを判断していくと好みの証券会社が見つかりやすいです。
証券会社の口座開設は複数可能ですので、悩んでしまったら2〜3口座開設してみてもいいでしょう。良さそうだと思った証券会社であれば、考えすぎず開設に進みましょう。
投資の決断ができない!こんなときはどうすればいい?
「株式と投資信託、どちらを行えばいいのか迷ってしまった」「口座開設まではいったけど、銘柄選びで先に進めなくなってしまった」そんなときは、誰かに頼ってみるのも手です。投資の相談はどんな人にできるのでしょう。ここでは3つの相談先を見てみます。
相談先1:銀行
銀行の対面相談は、投資前でも利用できます。話を聞いたうえで投資を見合わせても大丈夫ですので、相談しに行ってみてはどうでしょう。とはいえ、相談にいけば銀行での投資をすすめられるはずです。すすめられた投資商品が、自分に合っているとは限りません。もちろんあなたの気に入る投資方法をすすめられることもありますが、迷いがあるうちは決断を避けましょう。自分のなかで結論が出るまでは「話を聞くだけ」と強い意志をもって臨んでください。
相談先2:中立の投資アドバイザー
会社に属さない中立の投資アドバイザーに相談する選択もあります。個人のIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)であったり、助言業務を行う法人であったり、規模はさまざまです。投資アドバイザーは中立の立場で運用アドバイスを与えてくれますが、相談料は有料です。とはいえ、適切な助言が得られるなら有料でも利用する価値はあるはずです。
なかには無料セミナーや無料相談を行っているアドバイザーもいますが、無料の場合は金融商品をすすめられる可能性がないとはいえません。銀行や証券会社と比較し、助言の力量を見極める必要性が高いです。有料・無料を問わず、事前に業務内容や実績・料金を調べたうえで利用しましょう。
相談先3:ロボアドバイザー
有益なアドバイスが最優先事項であれば、ロボアドバイザーが充実している会社での口座開設はいかがでしょうか。ロボアドバイザーは最初に投資指向の設定を行ったり、特定の質問に答えたりすることで自動的に金融商品の売買や調整を行ってくれるサービスを指します。うまく活用すれば、投資先を選ぶ負担を大幅に軽減できます。
まとめ
投資に関して、やる気はあるのにその気持ちをどこに向けていいのかわからない。そんなときは、漠然とした気持ちを具体的にするために、投資の目的が何かを再確認してみましょう。何を重視するのか、何のために投資をしたいのか振り返れば、きっと自分に適した投資方法が見つかるはずです。