「ETF」とは、東証株価指数など特定の指数と価格が連動するよう運用される投資信託の一種です。少額で手軽に分散投資ができるなど多くのメリットがありますが、価格変動リスクがあるなどのデメリットもあります。投資信託の「インデックスファンド」と似たものですが、証券取引所に上場されていることが違いです。
この記事では、ETFとは何か、ETFのメリット・デメリット、ETFと投資信託の違い、およびETFの価格が決まる仕組みについてみていきましょう。
ETFとは?
ETFとは「Exchange Traded Funds」(上場投資信託)の略です。東証株価指数や日経平均株価などの特定の指数と連動するように運用される投資信託の一種ですが、東京証券取引所などの証券取引所に上場されていることが一般の投資信託とは異なります。
ETFは、国内の株式指数と連動するものだけでなく、海外の株式指数と連動するものも多くあります。また、金や原油などの商品指数と連動するものや、株式指数に対して2倍の値動きをするもの、逆の値動きをするものなど様々な種類があります。
ETFが連動する東証株価指数などの指数は、複数の株式銘柄から算出されます。したがって、個別株を購入する場合と比較して、少額で手軽に分散投資を行えるのがETFのメリットです。また、ETFが連動する指数についての情報は新聞やテレビなどから手軽に入手できるため、ETFの値動きは初心者にも把握しやすいこと、および比較的少額から低コストで投資ができることもETFのメリットだといえます。
一方、ETFには、価格変動リスクや、指数と市場価格が一致しなくなるリスク、および流動性リスクがあるなどのデメリットもあります。ETFへの投資は、メリットとデメリットを考え合わせながら慎重に行いましょう。
ETFのメリットとデメリット
上で解説した通り、ETFにはメリットとデメリットがあります。どのようなメリット・デメリットがあるのかを詳しくみていきましょう
ETFのメリット
メリット1:分散投資が手軽にできる
投資の安全性を高めるためには「分散投資」が有効です。ETFの価格は、東証株価指数など多くの銘柄から算出される指数に連動して動きますので、ETFを購入することにより比較的少額でしかも手軽に分散投資を行うことができます。
投資には、購入した金融資産が値下がりするリスクがあります。分散投資とは、値動きの異なる複数の金融資産を分散して保有することで、個々の資産の値動きに左右されずに安定して収益を上げるための方法です。
東証株価指数に連動したETFなら、10数万円で購入することもできます。東証株価指数は約2,000銘柄の株価から算出されますので、東証株価指数連動のETFを購入すれば、2,000銘柄に投資をしたのと同等の分散投資の効果が得られます。
2,000銘柄の株式を実際に購入するには数十億円が必要ですし、購入のための手続きも膨大です。同等の分散投資効果があるEFTの購入は、それと比較してはるかに少額で、手間もかかりません。
メリット2:値動きがわかりやすい
ETFは、東証株価指数や日経平均株価などの株価指数、金価格などに連動するように運用されます。東証株価指数や日経平均株価などについての情報は新聞やテレビなどで手軽に入手できますので、初心者にとっても値動きが把握しやすく、わかりやすいのが特徴です。
また、個別企業の株式を購入する際には、業績などの企業情報を分析することが必須です。それに対してETFは、企業分析は不要ですので、その点からいっても「初心者にとって始めやすい金融商品」だといえるでしょう。
メリット3:少額からの投資を低コストでできる
個別企業の株式を購入する際には、数万円~数十万円の資金を必要とするのが一般的です。それに対してETFは、1万円前後からでも購入できますので、少額からの投資をすることができます。また、運用コストは0.1~1%程度となり、これは一般的な投資信託と比較して低いため、低コストで投資ができるといえるでしょう。
ETFのデメリット
デメリット1:価格変動リスクがある
ETFは、価格変動リスクがあることがデメリットの1つだといえます。例えば、東証株価指数に連動するETFなら、東証株価指数が経済情勢などの影響により下落すれば、ETFの価格も下落します。ただし、上で解説した通り、東証株価指数は約2,000銘柄の株価から算出されますので、個別企業の株式と比べれば、ETFはリスクの分散効果があります。
デメリット2:指数と市場価格が一致しなくなるリスクがある
ETFは、株式指数などの値動きと基準価格が一致するよう運用されます。しかし、様々な理由により指数と基準価格が一致しなくなることがあり、結果として市場価格も指数から一致しなくなることがあります。
また、ETFの市場価格は需給状況により変動します。そのために、市場価格が基準価格と一致しなくなることがあります。
デメリット3:流動性リスクがある
取引状況によっては、ETFの取引量または注文量が少なくなることがあります。そのために、株価指数などから見込まれる価格でETFを売買できないことがあります。
ETFと投資信託の違いは?
ETFは、投資信託の「インデックスファンド」が金融商品取引所に上場されたものと考えることができます。ただし、上場されることにより一般の投資信託とは異なるところもあります。ここでは、ETFと投資信託との違いをみていきましょう。
ETF | 投資信託 | |
---|---|---|
購入場所 | 証券会社 | 証券会社や銀行・郵便局など |
購入価格 | リアルタイムに変動する市場価格 | 1日1回決まる基準価格 |
最低購入価格 | 1口1万円前後 | 500円~1,000円で購入できることもある |
購入方法 | 株式同様、市場で指値または成行注文する | 基準価格を元に購入価格を算出して購入 |
信託報酬 | 0.1~1%程度 | 一般的にEFTより高い |
信用取引 | できる | できない |
ETFは、証券会社で購入します。それに対して投資信託は、証券会社のほかに銀行や郵便局などでも購入することができます。購入価格については、上場されているETFはリアルタイムに変動する市場価格です。それに対して投資信託の購入価格は、1日に1回決まる基準価格となります。
ETFは、1口1万円前後から注文することができ、株式と同様に市場で指値または成行(なりゆき)で注文します。それに対して投資信託は、商品によっては500円~1,000円から購入できることもあり、基準価格を元に算出した価格で購入します。
信託報酬は、一般にETFの方が投資信託より安くなります。信用取引に関しては、ETFはできますが、投資信託はできません。
ETFの価格が決まる仕組み
ETFの基準価格および市場価格はどのように決まるのでしょうか? ETFは、「発行市場」と「流通市場」の2つの市場によって価格が決まります。ここでは、ETFの価格が決まる仕組みについてみていきましょう。
発行市場で決まる基準価格
発行市場では、市場の参加者はETFの運営会社と、「指定参加者」と呼ばれる証券会社や機関投資家などです。指定参加者は「現物株バスケット」と呼ばれる、株価指標の構成銘柄のまとまった単位を運営会社に拠出します。それと引き換えに、運営会社は指定参加者に対しETFを発行します。
現物株バスケットとETFは交換が可能ですので価値は同一です。このことにより、ETFの発行市場における価格(基準価格)は現物株バスケットと連動します。現物株バスケットが東証一部上場のすべての銘柄により構成されていれば、ETFは東証株価指数と連動することになります。
流通市場で決まる市場価格
発行されたETFは流通市場において流通し、一般の投資家はこの流通市場でETFを売買します。ETFの市場価格は、流通市場における需要と供給の関係で決まります。したがって、発行市場において決まる基準価格と流通市場における市場価格は、一致しなくなる場合があります。
まとめ
ETFは、東証株価指数や日経平均株価などの特定の指数と価格が連動するよう運用される、証券取引所に上場された投資信託です。一般に指数は多くの銘柄の価格から算出されるため、ETFを購入することにより手軽に分散投資をすることができます。
ETFにはそのほかにも、値動きがわかりやすいこと、および少額から手軽に投資ができることなどのメリットがあります。投資初心者にもおすすめの投資先の1つだといえるでしょう。