資産運用に興味はあっても、ギャンブルのようなイメージや商品の多さ、貯蓄の少なさなどから、「私にはムリそう」と諦めていませんか?資産運用は、リスクを抑えながら時間をかけてお金を増やしていく方法です。知識がなく、少ない資金でも始められるので、これまで持っていた資産運用へのイメージがガラッと変わるかもしれません。
この記事では、投資初心者の20代に合った運用方法や投資商品をはじめ、手堅い資産運用をするためのテクニックをお伝えします。
20代で資産運用はするべき?始めている人の割合は?
(……もしかして、早く始めるメリットがあるのかな?)
日本は海外と比較すると資産運用に消極的な人が多いです。どれくらいの20代が資産運用をしているのか、20代で資産運用を始めるメリットはなんなのか、データをもとに解説していきます。
20代で資産運用を始めれば、30年以上は運用を続けられることになります。長期投資ができることによって、低リスクで少額からでも資産を増やしていけるのがメリットです。投資におけるリスクとは「リターンの振れ幅」のこと。高いリターンが期待できる商品は、同時に大きな損失が発生する可能性も持ち合わせているということです。
運用できる期間が短ければ、高いリスクを取って高いリターンを狙うような運用をしなければなりませんが、運用期間が長くなるほど、低いリターンで運用しても目標額を達成できる可能性があります。
例として、毎月1万円を積立投資して500万円まで増やしたい場合、運用年数と必要なリターンの関係性は[表1]のようになります。
運用期間 | 必要なリターン |
---|---|
5年 | 68.5% |
10年 | 24.1% |
15年 | 11.9% |
20年 | 6.6% |
25年 | 3.8% |
30年 | 2.1% |
また、資産運用を通して、若いうちから経済や金融の知識やスキルが身につけられることもメリットです。仕事に活かせるだけでなく、日本の経済が危うくなった場合や、世界的な金融危機が起こった場合でも、安定的な生活を送るための適切な対応がとれるようになるでしょう。
しかし、「周りに資産運用をしている人なんていないから、私もやらない」という人も多いと思います。実際、20代で資産運用している人はほんのひと握りで、貯蓄も0円という人もいます。特に20代は、資産運用をしている人の割合がほかの年代よりも少ないのが現状です。20代は収入がそれほど多くない時期ですから、「資産を増やす」よりも「資産を減らさない」ことに意識が向いているのかもしれません。
株式保有 | 投資信託保有 | |
---|---|---|
20~24歳男性 | 0.9% | 0.9% |
25~29歳男性 | 5.6% | 1.4% |
20~24歳女性 | 0.6% | 1.1% |
25~29歳女性 | 3.8% | 3.8% |
20代が資産運用をしないのは、「知識がない」「損をする可能性がある」「リスクを取りたくない」といった理由が多いです。日本は先進国の中でも金融教育が遅れていると言われていて、若いときに実践的なお金の知識を教わる機会はまだまだ少ないです。資産運用という方法があることを知るのも、ほとんどが社会人になってからでしょう。
資産運用に興味を持ったとしても、知識がないことから、「怖い」「やめておこう」と避けてしまうのもムリはありません。では、知識不足の人は資産運用を諦めなければいけないのでしょうか。
自分で資産運用をする以外の方法もある
知識がつくまで資産運用を先延ばしにしていたら、時間という大きなメリットをどんどん減らしてしまうことになります。20代なら、知識やテクニックいらずの「お任せ運用」がおすすめです。
人工知能(AI)が投資のアドバイスや、運用を一任してくれるシステムです。利用者の年齢や資産額、受け入れられるリスクの大きさなどに合わせて、一人ひとりに合ったポートフォリオや商品を提案してくれます。
ロボアドバイザーは2種類あり、提案のみの「アドバイス型」と、アドバイスから商品の買い付け、ポートフォリオの見直し・調整まで包括的に運用を代行してくれる「投資一任型」があります。すべてお任せできる投資一任型の方が手数料は高くなりますが、資産運用の難しさや手間がなくなると考えると、メリットが大きいサービスと言えそうです。
FPはお金の専門家です。ロボアドバイザーは資産運用に特化したサービスですが、FPは相談者のライフプランをもとに、資産運用だけでなく家計や保険、マイホーム購入など、身の回りのお金の悩みに対して包括的なアドバイスをしてくれます。FPによって得意分野が異なるので、FP協会の「CFP®認定者検索システム」などを使い、資産運用に強いFPを探すとよいでしょう。また、FPによって料金の発生のしかたが異なる(相談料が無料・有料など)ので、事前に料金体系を確認しておくことが大切です。
商品選びや運用の判断をお任せすることで資産運用の負担が軽くなる分、自分自身で運用するときには必要のないコストがかかることになります。また、ロボアドバイザーや専門家であっても、必ずお金を増やせるという確約ができるわけではなく、マイナスになる可能性ももちろんあります。リスクを抑えながら効率的な運用を目指してくれますが、景気や相場を100%予測することは不可能だからです。
任せっきりにして放置するのではなく、運用結果からなぜそうなったのかを考えることが大切です。資産の動きに興味を持つことで、少しずつ経済や金融の知見を得ることができるでしょう。いつか自分で資産運用できるようになれば、運用を任せるコストが不要になるメリットもあります。
20代の資産運用初心者におすすめの投資商品6選
20代は収入も貯蓄もそれほど多くはない時期ですから、少額からでも始められる商品や、自動積立でコツコツ運用できる商品を紹介します。
投資家から集めた資金で株や債券などに分散投資をし、プロ(ファンドマネジャー)が運用する金融商品です。1万円程度の少額から、積立であれば1,000円以下からでも買うことができ、運用はお任せということで、初心者でも始めやすい商品です。デメリットは、運用をしてもらえる分コストが高いということ。売買時にかかるコストだけでなく、保有している間にもずっとコストがかかってきます。
デメリット:運用コストが高い
株は通常、単元での取引が基本です。1単元=100株、1単元=1,000株といったように、売買する際は「単元」というセットでの取引となります。買いたい株を見つけても、数万円~数百万円が必要となれば、なかなか手を出しにくいでしょう。
単元未満株取引はこの単元という枠をはずし、1株から売買ができます。単元未満株であっても株数に応じて配当を受け取ることができ、買い増して単元株数に達すれば、株主優待も受けることができます(単元に満たなくても優待を受けられる銘柄も一部あり)。積立ができる証券会社もあるので、少額から株に挑戦してみたい人におすすめです。
デメリット:通常の株取引より手数料が高い、株主の権利が制限される
不動産投資は多額の資金が必要なイメージがありますが、1万円という少額から不動産投資をする方法があります。それが、クラウドファンディングを利用した不動産投資です。不動産会社が多くの人から出資を募り、運用で得た収益を分配金として投資家に還元します。金融機関が仲介しないため、物件のバラエティに富んでいるという特徴があります。
デメリット:人気が高い案件はすぐに募集が完了し出資ができなくなる、運用状況により分配金が変動する可能性がある
太陽光発電投資ファンドとは、太陽光エネルギーに投資をする投資信託のこと。出資者から資金を集め、ソーラーの設置・運用をし、出資者へ収益が分配されるという仕組みです。
産業用太陽光発電のような再生可能エネルギーは、固定買取価格制度により政府が20年間固定価格で買い取る約束をしているため、景気に左右されず安定的な運用ができるという特徴があります。また、運用期間が1年間(1年後に資金が戻ってくる)のものや、1万円から申し込めるものもあるので、初心者にも挑戦しやすい商品です。
デメリット:中途解約ができない、異常気象や自然災害のリスクがある
金を少額ずつ買い増していく方法です。一定量になれば、現物の金として引き出しもできます。金はそのものに価値があるため、通貨や株券などのように価値がゼロになることはありません。インフレ時には通貨の価値が下がるリスクがありますが、金の価値は上がる傾向があります。
また、戦争や金融危機などが起こった際も金の人気が高まり、価値が上がる傾向があるため、「有事の金」とも呼ばれています。金で儲けるというよりは、リスクヘッジとして金を保有しておくとよいでしょう。
デメリット:コストが高い(売買手数料や年会費など)、利息や配当がつかない
FXは、外貨へ投資する方法のひとつです。ハイリスク・ハイリターンの金融商品として有名なFXですが、積立投資ができることをご存知でしょうか。積立であれば、激しい値動きをすることがある為替でも、購入額が平均化されリスクを抑えた運用ができます。
外貨投資には外貨MMFや外貨預金などもありますが、大きく違うのはレバレッジをかけられること。レバレッジとは「てこ」のことで、元手よりも大きな額の取引ができるシステムです。レバレッジをかけることで、資産運用の効率をあげることができます。
デメリット:普通のFXより手数料が高い、外貨での出金はできない、大きな収益は期待できない
▼ [表3] 外貨投資の比較(2018年7月末時点)
手数料(※1) | 金利(スワップ) | 投資金額の保護 | |
---|---|---|---|
積立FX | 5銭~40銭 | 高い | 全額保護 |
外貨MMF | 20銭~2円50銭 | 普通 | 全額保護 |
外貨預金 | 4銭~4円 | 低い | 対象外 |
活用したい!節税効果がある運用制度
近年、資産運用を社会に浸透させるべく、節税効果のある運用制度が登場しています。それぞれどんな仕組みなのか、どのような特徴・違いがあるのか、チェックしてみましょう。
少額投資非課税制度のこと。株式や投資信託などへの投資で得た運用益(金融商品を売却して得た収益や、配当金など)が非課税になります。通常は運用益に対して20.315%課税されますが、NISAを利用すると年間120万円までの投資に税金がかからなくなります。この制度を利用するためにはNISA口座を開設する必要があり、NISA口座は1人1口座のみとなります。
NISAの積立投資専用版です。年間の投資上限額は40万円となり、月額にすると3万円程度まで積立ができます。取り扱いは投資信託とETFのみで、商品数が150本程度(2018年7月末時点)と限定されています。これは、つみたてNISAで取り扱える投資信託には選定基準があり、「長期積立」「分散投資」に適している商品だけに絞り込んでいるからです。少額からリスクを抑えた積立投資をしたいなら、つみたてNISAが向いているでしょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人で年金を運用する私的年金です。国民年金や厚生年金といった公的年金に上乗せして、老後資金の準備ができます。毎月5,000円から積立ができ、自分自身で60歳になるまで運用をします。資金の受け取りは一時金か年金を選ぶことができ、それぞれ受けられる控除が変わってきます。
iDeCoの注意点は、60歳以降の受給年齢になるまで資金の引き出しができないこと。掛金の拠出は停止できますが、受給年齢まで運用は継続されます。
NISA | つみたてNISA | iDeCo | |
---|---|---|---|
投資方法 | 通常買付・自動積立 | 自動積立 | 自動積立 |
年間投資上限額 | 40万円 | 120万円 | 14.4~81.6万円 (加入者の職業などによって変わる) |
最低投資額 | 特になし | 100円~ (金融機関によって異なる) |
5,000円~ |
期間 | 20年 | 5年(最長10年) | 60歳まで(10年間延長可能) |
税制優遇 | 運用益が非課税 | 運用益が非課税 | 運用益が非課税 掛け金が全額所得控除 年金で受け取る場合、公的年金等控除 一時金で受け取る場合、退職所得控除 |
売却・引き出し | いつでも可能 | いつでも可能 | 60歳まで不可 |
運用商品 | 株・投資信託・ETF・ REITなど | 投資信託、ETF | 定期預金・投資信託・保険 |
資産運用のリスクを減らす基本テクニック
資産運用はリスクがあるから怖いと思っていませんか?では、もしリスクはコントロールできるのであればどうでしょうか。リスクが怖いなら、自分にとって怖くないレベルまでリスクを減らすことも可能です。ここでは、リスクを抑えながら堅実に資産運用をするための方法を紹介していきます。
初心者は、まずは少額から始めることが大切です。小さく資産運用を始めると、大きな収益は期待できませんが、もしうまくいかなかった場合でも小さな損失で済みます。
資産運用はリスクをコントロールしながら長く運用を続けることがポイントなので、始めの一歩で大きな痛手を受け、「資産運用はこりごり・・・・」となってしまうのは避けたいところ。損失が発生した場合の精神的なダメージを減らすためにも、少額から始めて、慣れてきたら資産運用にまわすお金を増やしていくのがおすすめです。
分散投資では、投資先を複数に分ける「資産の分散」や、タイミングを分けて投資をする「時間の分散」によって、リスクを小さくすることができます。
資産の分散は、日本・アメリカ・インドなどの「地域」、株や債券などの「商品」、円やドルなどの「通貨」など、値動きが異なる資産を複数保有する方法です。資産の分散の効果をわかりやすく説明したものに、「卵をひとつのカゴに盛るな」という投資の格言があります。卵をひとつのカゴに盛ると、落としたときにすべての卵が割れてしまうかもしれないけれど、カゴを分けて盛っておけば、ひとつのカゴを落としてしまっても、ほかのカゴの卵は影響を受けないというものです。このように、資産を分散することで損失を限定的にすることができるのです。
時間の分散は、商品を買うタイミングを複数回に分けることで購入単価を平均化し、高値つかみ(高いところで買い、そのあと値下がりしてしまう状態)のリスクを避けることができます。積立投資によって時間の分散が可能です。
長期投資で最も重要なのは「複利」の活用です。複利とは、元手の資金(元本)についた利息を含めた金額に利息がつくことを言います。つまり、運用で得た収益(配当金・分配金・利息など)を、再度運用にまわすことで複利の効果を得ることができます。
複利の効果は、運用期間が長ければ長いほど大きくなり、まさに雪だるま式にお金が増えていきます。複利には、かの有名な物理学者のアインシュタインに「人類最大の発明」「宇宙で最も偉大な力」とまで言わしめた絶大なパワーがあるのです。
積立投資には、買うタイミングを分けることでリスクを減らす効果があるだけでなく、感情的な投資を避けられるメリットもあります。もっと安くなるかもと期待して買いのタイミングを逃したり、マイナスになっていれば、値上がりを期待していつまでも損失を確定(損切り)できなくなったりします。このように感情に左右されることは、資産運用を失敗させる原因のひとつです。
積立投資ではシステマチックに定期的に一定額で買っていくため、相場を読む必要がありません。テクニック不要で少額から運用を始められるため、運用初心者にはおすすめの方法です。
商品やサービスを選ぶ際は、コストもチェックすることが大切です。運用益のあるなしにかかわらず、コストだけは100%確実に発生する「マイナス」のリターンだからです。コストには売買コストと運用コスト(運用している間、ずっと発生する費用)があります。特に長期投資では、運用コストの差が運用効率の差につながってくるので注意が必要です。コストだけが商品やサービス選びの判断材料ではないですが、資産運用において重要なポイントになるということを覚えておいてください。
まとめ
20代は知識不足や資金不足から、資産運用に踏み出しにくい状況があるでしょう。しかし、自動で資産運用をしてくれるサービスや、少額から始められる方法や商品が増え、資産運用のハードルが下がってきているのです。
資産運用はお金持ちだけがするものではありません。今より豊かな生活をしたいと望んでいるすべての人に取り入れて欲しいものです。「少額」「分散」「長期」「積立」で、堅実な資産運用を始めてみてくださいね。
・平成27年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)|日本証券業協会
・NISA特設ウェブサイト|金融庁