結婚や出産をしても、働いていたい。近年多くの女性が働くママになる選択をしています。厚生労働省の平成29年度の調査では、育児休業者割合(過去1年間の在職中に出産した女性の内の育児休業開始者の割合)は83.2%でした。
もしこの先、出産・育児をしながら働き続けることを考える場合の制度をまとめました。
働くママを守る主な法律は?
産前・産後休業に加えて、妊産婦(妊婦や産後1年たたない女性)の負担が重くならないような規定が定められています。
妊娠や出産を理由とした解雇が禁止されているほか、定期検診等を受ける時間を確保すること等が定められています。
主に育児休業制度、職場復帰後の労働時間等について定められています。
妊娠したとき
つわり等、体調を気遣いながらも今後の働き方を具体的に決めるこの時期、できるだけ穏やかに乗り切りたいですね。職場とのコミュニケーションを密にし、産休や育休に向けて仕事上の準備もはじめていきましょう。
傷病手当金
健康保険の制度で、傷病のため働くことが出来ず給与を受けられない場合、仕事を連続して3日以上休むと4日目から手当金が支給されます。国民健康保険では実施されていないので注意が必要です。
妊娠悪阻(つわり)や切迫早産、流産で入院や安静が必要な場合も対象になり、給与の3分の2相当額が支給されます。
母性健康管理指導事項連絡カード
働く妊産婦が医師等から通勤緩和や勤務時間短縮等の指導を受けた場合に、指導内容が勤務先に的確に伝えられるツールです。様式が定められており、母子手帳に様式が載っていてコピーして使う、厚生労働省のホームページからダウンロードする等して入手できます。
産前産後
出産までもうすぐ。「産休」もですが、後述の「育休」についても手続きを進めていきます(育休は取得の1ヵ月前までに申し出る必要があります)。
産前休業
いわゆる「産休」は産前休業と産後休業に分かれています。
産前休業は出産予定日からさかのぼって6週間(42日間)(多胎の場合は14週間)取得することができます。こちらは取得の申請が必要です。実際には、分娩日までが産前休業になるので、多くの場合予定日と分娩日の違いで産前休業日数は変化します。予定日より出産が早まれば短くなり、遅れれば長くなります。その分後述の出産手当金が支給される場合の額が増減します。
産後休業
産後は8週間(56日間)就業することができなくなります。分娩日の翌日を1日目として56日間です。ただし、産後6週間(42日間)経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就業できます。
出産手当金
産休中、会社から給料が出ない場合、健康保険に加入している人は出産手当金を受給することができます。原則、国民健康保険に加入している場合は受給できません。
受給額は日給の3分の2相当分×休業日数分です。
育児休業を取得
育児を楽しみつつ、職場復帰も見据えて保育園の見学や申し込み、準備を進めていきます。復帰時期は保育園に入りやすい4月に合わせたほうがいい?等の情報収集も早めにしておいた方がいいですね。
育児休業
育児休業は通称、育児介護休業法に定められた制度で、産後休業の最終日の翌日から子供が1歳の誕生日前日まで取得できます。また、1歳時点で保育園に空きがない等の一定の条件で1歳6ヵ月の前日まで延長が申請できます。平成29年10月からは1歳6ヵ月の時点での申請でさらに2歳までの延長が可能となりました。子供1人につき1回、連続した期間にしか取れないという決まりがあります。
また、パパも出産日から1歳の誕生日前日まで育休を取得することができます。
育児休業の対象者は下記のとおりです。下記を満たせば正社員でなくても、派遣社員や契約社員でも制度を利用できます。
・ 日々雇い入れられる者でないこと
・ 期間を定めて雇用される者は、下記該当者
・ 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
・ 子が1歳6ヵ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約) の期間が満了することが明らかでないこと
・ 育児休業申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかでないこと
・ 1週間の所定労働日数が3日以上である
パパ・ママ育休プラス(両親ともに育児休業をする場合の特例)
両親ともに育児休業をする場合で下記に当てはまれば、育児休業を1歳2ヵ月まで延長できます。
・ 両親のいずれかが子供が1歳になる前日までに育児休業をしている
・ 育児休業の開始予定日が子供の1歳の誕生日前であること
・ 育児休業の開始予定日が、配偶者が取得している育児休業の初日以降であること
延長しても育児休業の取得可能な期間は1年間(女性の場合は産後休業期間含む)です。
育児休業給付金
育児休業中に給与が支給されない、また大幅に減ってしまった場合に雇用保険から育児休業のサポートとしてもらえるのが「育児休業給付金」です。
受給には条件があり、
・ 雇用保険に入っている
・ 育児休業に入る前の2年間に1ヵ月に11日以上働いていた月が通算12ヵ月以上ある
・ 育児休業期間中の1ヵ月ごとに8割以上の賃金が支払われていない
・ 支給単位期間(1か月)ごとに10日以下の就業であること等
です。
パパの育休も同様に支給されます。もらえる額は、賃金日額×支給日数×67%(育休開始から6ヵ月経過後は50%)です。
職場復帰後
短時間勤務制度
3歳に満たない子を育てている場合(男女共)、対象者であれば1日原則として6時間の短時間勤務をすることができます。
対象となるのは、1日の労働時間が6時間以上で日々雇用以外の人です。
○ 所定外労働(残業)の免除
3歳に満たない子を育てる男女が子を療育するために請求した場合、事業主は所定外労働時間を超えて労働させてはならないとされています。
○ 時間外労働の免除
小学校就学前までの子を療育する男女が請求した場合には、事業主は制限時間(1ヵ月24時間、1年150時間)を超える時間外労働をさせてはならないとされています。
○ 深夜業の制限
小学校就学前の子を療育する男女が請求した場合、事業主は深夜(午後10時~午前5時)において労働させてはならないことになっています。
制度も徐々に改定され、子育てをしながら働く環境は充実しつつあります。上手に制度を活用していくには、配偶者や家族、職場、地域とコミュニケーションをしっかり取ることや情報のアンテナを張っておくことが大事です。
そして、出産や育児で思い描いていた通りに進まないこともあるかもしれません。困ったら抱え込まず助けを求めたり、余裕があれば支える側にも回ることで皆で助け合える、充実した子育てができるといいですね。
・ 厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査」(平成30年7月30日)
・ 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(平成30年9月)
・ 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「育児休業給付の内容及び支給申請手続きについて」