投資初心者が投資を始める場合は、手堅くいきたいと考えるのが普通です。
しかし基本的に投資を行うなら、どんな種類のものを選んでもリスクがゼロというわけにはいきません。さらに、投資には多くの種類があり、安全性のみを重視しすぎると資産形成の可能性を狭めてしまうかもしれません。幅広い手法から自分に合う投資方法を選んでみてはいかがでしょうか。
今回は、様々な投資の種類をご紹介します。
安全性が高い投資の種類は
安全性が高い投資は個人向け国債や投資性のある終身保険が代表的で、「ただ預金しておくよりもお得なようだから」と、とりあえず始める人もいるようです。たしかに基本的に元本割れはありませんが、リスクがゼロではありませんし、注意点もあります。
それぞれの概要や注意点を見ていきましょう。
個人向け国債
国債とは国が発行する債券です。国の発行する債券を購入することは、すなわち国への投資になります。国にお金を貸し、満期後には元金に利子を上乗せして額が返還される仕組みです。
個人向け国債には、以下のような特徴があります。
1万円から購入できる
利率には「変動型」「固定型」がある
利率の最低保証がある(年率0.05%)
発効後1年経過したら、途中換金が可能
利率の最低保証があるのは安心ですね。
ただし途中換金する場合は、直近2回分の利子が手数料として差し引かれてしまいます。
民間社債
国債とは別に、民間企業の発行する社債もあります。国債と同じく、満期まで保有していれば元金と利子が受け取れます。途中売却もできますが、その場合は市場価格となるので損失が出る可能性があります。
また、一企業の発行しているものですので、倒産リスクもないわけではありません。
終身保険
終身保険とは、本来的には死亡保障を目的とした保険です。しかし一定期間を経過すると、解約時に受け取れる解約返戻金が払込保険料を上回るため、将来解約して子供の教育資金や老後資金を得ることも可能です。万が一の時の死亡保障と、何事もなく生存した場合の資金源、双方の目的で加入することができます。
ただし、加入当初の解約返戻金は少額で、払込金額を下回るのが普通です。解約返戻金が払込保険料の額を上回らなければ投資としては失敗ですので、そこまで払込みや保有を続けられるかどうか、きちんと見通すことが必要です。
★ 国債・社債・終身保険が向いている人は
リターンはあまり多くありませんし、当初から受け取れる額が決まっていて、業績によって増えるということはありませんが、リスクを抑えたい人は、これらの投資手法を選ぶといいでしょう。ただし、基本的に満期まで保有(もしくは保険料の払込を継続)することが前提です。急に現金が必要になった場合の途中換金・解約はあまりお勧めできません。
運用によるリスクはほぼないため、増やすというより「貯める」に近いかもしれませんね。投資を積極的にしたいわけではなく、預貯金以外に現金を保有するための選択肢を探している人に向いています。
自分で銘柄を選ぶ 株式投資
株式投資のメリット・デメリット
投資といえば「株式投資」と思っている人も多いと思います。では、株式投資とはどのようなものなのでしょうか。
株式投資はもともと、会社の資金調達から始まりました。株を購入することは会社への出資であり、株式(株券)は会社に資金を出資している証明として、発行(現在はペーパーレス化)されるものとなります。株式投資のメリットは次の3つです。
キャピタル:株価の値上がりによる売却益
インカムゲイン:配当益(業績に応じた会社の利益を株主に還元するもの)
株主優待:自社製品や割引券の受取り・サービスの提供など
「配当益」や「株主優待」のように、保有し続けることで得られる利益も魅力的です。しかし、それらで得られる利益は投資金額の数パーセントであることがほとんどです。
やはり株の投資益として大きいのは1番目の「株価の値上がりによる売却益」でしょう。ここでは積極的な投資手法である「株価の値上がりによる売却益」について考えてみたいと思います。
株式の売買で利益を得るには
株取引では、「購入」そして株式を「購入金額以上の価格で売却」することで利益が得られます。売買方法には株式特有の決まりや方法があるので、それらをきちんと理解することが必要です。
まず、株式投資の売買方法には「指値」「成り行き」があります。
「10,000円で100株買いたい」などのように、希望値段を指定します。値段が折り合わず購入に至らない可能性もあります。
「いくらでもいいので100株買いたい」のように希望値段を指定しません。値段を指定しないので成約しやすい反面、値動きが激しいと想定外の高値で取引が成立することもあります。
注文は「本日中」「今週中」などのように、有効期限を決めることができます。有効期限を長くしておくと、その日に成約できなくとも新たに注文しなくてすみます。ただし、その間に市場が変化する可能性もあります。
証券会社に支払う「売買委託手数料」がかかります。手数料は証券会社ごとに異なります。
売買代金は成約後すぐに口座に入るわけではありません。2018年9月現在では、その日を含めて4営業日目に精算(受渡し)されます。月曜日に売却した場合は、祝日がなければ木曜日に代金が受け渡されることになりますね。
購入時よりも高い価格で売却することで利益を得るために、PER(※1)やROE(※2)などによる分析を行うことも大切ですが、売買の仕組みを理解することも忘れないようにしましょう。
※2 ROE(自己資本利益率)企業が自己資本を元にして、どれだけの利益を上げているのかを見る指標
★ 株式投資が向いている人は
株式投資は、自己資金や好みに応じて銘柄を選ぶことができます。また保有した株式をいつ売却するのかも自由に決めることが可能です。もちろん銘柄選びは慎重に行わなければなりませんし、値下がりリスクもありますが、主体的に投資を行いたい人には向いています。
ミニ株や株式累積投資という種類も
株式投資にはまとまった自己資金が必要だと思っている人も多いですが、通常よりも小さな単位で株を購入する「ミニ株投資」もあります。例えば、1株100円株で、通常購入単位が1000株だとしたら、購入に10万円かかります。しかしミニ株なら100株で購入できたとすると、1万円で購入可能です。
株式累積投資は、1銘柄を毎月1万円からコツコツ購入できる仕組みです。全ての株式が購入できるわけではありませんが、少額の資金で株式投資を始めることができます。
投資先は専門家におまかせ 投資信託
投資信託とはどんな投資方法なのか
最近は証券会社だけでなく銀行や郵便局でも投資信託の販売を積極的に行っていますが、投資信託の仕組みを理解している人は意外と少ないようです。投資信託は、個人を含む多くの投資家からお金を集め、大きな資金(信託財産)にして専門家がそれを運用するものです。投資家は運用成果と投資額に応じて分配金を受け取ることができます。この仕組みをファンドとも呼びます。
投資信託を購入する証券会社や銀行は販売窓口であり、実際に投資を行う運用会社とは別ものです。どのような種類の運用手法をとるのか、投資先はどういったところなのかなどの情報は目論見書から、実績については運用報告書に記載されています。投資信託の投資対象は国内株式・国外株式・国内債券・国外債券……と様々ですので、しっかりと見極めましょう。
投資信託の仕組みや注意点は
投資信託は当初から大きな金額を投資することも可能ですが、毎月少額を積み立てていくこともできます。銀行や郵便局でも取り扱っているので、証券会社に口座を持っていない人でも始めやすいですね。
投資信託の注意点は次のような点です。
投資信託の価格は「基準価格」でみます。基準価格は市場価格になるため、経済・市場状況の変化によるリスクを負います。分配金が入る投資信託も多いですが、分配金は必ずしも収益から支出されているとは限りません。中には、信託財産を切り崩して分配金を支払うこともあります。元本を払戻して分配する分配金は「特別分配金」と呼ばれ、そうでない分配金(普通分配金)と区別されます。
一般的に購入時にかかるのが購入手数料です。申込価格の数パーセントであることが多いですが、不要の場合もあります。
保有中には運用管理費用である「信託報酬」、計理が適切に行われているかを監査するための「監査報酬」費用、また、証券会社へ支払う手数料や、ファンドの株式等を売買するための手数料などの費用として「売買委託手数料」が必要です。
解約時に発生する費用で、信託財産に留保されることになります。これも、ファンドによって不要のこともあります。
手数料が多いのが投資信託の特徴ともいえますが、手数料の額や種類は投資信託によって様々です。特に信託報酬や監査報酬、そして売買委託手数料は保有中継続して発生するので、よく確認しておきたいところです。
投資信託の仲間、不動産投資信託(REIT)とは
不動産投資信託とは、名前の通り、マンションやオフィスなどの不動産に投資するタイプの投資信託です。不動産投資に興味があっても、土地やマンションを購入するには大きな資金が必要だったり、借入れが必要だったりするため、ハードルが高いです。しかし、不動産投資信託であれば少額から始められますし、投資先の選定も専門家に任せられます。
主に賃貸収入で運用され、収益があれば分配金ももらえます。任意のタイミングで売却できる点も通常の投資信託と同じです。
上場投資信託(ETF投資)とは
こちらも投資信託の一種で、証券取引所に上場し、日経平均や東証株価指数(TOPIX)といった指標との連動を目指すものです。通常の投資信託にも同じような内容のものがありますが、購入方法に特色があります。上場投資信託の場合、株式投資と同じように市場で指値・成行注文ができるのです。市場価格がリアルタイムで変動する点も株式投資と同じです。
★ 投資信託が向いている人は
投資信託の魅力は銘柄選びを専門家に任せられる点でしょう。株式のように大きな売却益を得ることはできませんが、投資信託の銘柄選びを慎重に行えば、大きな損失は避けやすいといえます。プロに運用を任せる分、手数料がかかりますが、それを払っても構わない人には向いています。
また、積立方式で購入したい人にもおすすめです。銀行や郵便局の給与口座と連動させれば毎月の積立も管理しやすくなります。売却による差益よりも分配金を重視する人、限られた資金力で分散投資をしたい人も投資信託が適しているでしょう。
NISAやiDeCoは収益性アップをサポート
株式投資や投資信託においては、税制優遇を受けられる制度もあります。それがNISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)です。どちらも長期的な視野での資産形成を後押しする制度ですが、性質や対象が異なるので自分に適した制度を選ぶことが重要になってきます。
NISAの概要や対象
NISAには毎年120万円の非課税投資枠が設定されている通常の「NISA」と、少額の積立投資を目的とした「つみたてNISA」、そして未成年者を対象とした「ジュニアNISA」の3種類があります。どれも毎年一定額まで利益が非課税になる制度ですが、非課税枠や非課税期間などに差があります。ジュニアNISAは未成年が対象なので、ここではジュニアNISAを除く2つの制度について簡単にご紹介します。
毎年120万円までの新規投資について、その配当・分配金・売却益等が非課税になります。その年の新規投資が120万円に満たない場合も、残った分を翌年以降に繰り越すことはできません。また、非課税期間は最長5年となっているので注意しましょう。
株式や投資信託等、幅広い金融機関が対象です。非課税期間が他の制度よりも短いため、毎月数万円といった積み立てよりも、年間で数十万円~上限枠(120万円)まで資金を投入できる人に向いています。数年後に住宅購入や子供の大学進学があるなど、投資の目的が5年程度の人も活用しやすいでしょう。
つみたてNISAは長期・積立・分散投資をサポートする制度です。新規投資における非課税枠は年間40万円でNISAと比較すると少額になりますが、非課税期間は20年になります。毎年の非課税枠はやや少なくとも、最大非課税枠は800万円(40万円×20年)にものぼります。
投資の種類は長期・積立・分散投資に適したことが認められた、一定の投資信託のみに限られます。投資信託の要件は、手数料が低水準であることや、分配金の配当が頻繁でないことなどです。つまり、長期的に保有・追加投資しやすいもののみが対象となります。これらの趣旨から、金融商品の購入方法も積立タイプだけとなります。株式投資を考えていない人で、毎月コツコツ資産形成したい人はつみたてNISAを活用するといいのではないでしょうか。
NISAとつみたてNISAの併用はできないため、どちらのNISAが適しているのか、目的に応じて選択することになります。なお、どちらも途中解約は自由です。長期投資を目的としたつみたてNISAも、必要に迫られれば早期の解約ができるので安心してください。
iDeCoの概要や対象
iDeCo(個人型確定拠出年金)は投資による資産形成ではありますが、投資を活用した年金であると言ったほうがわかりやすいでしょう。毎月一定額を掛金として支出し運用。60歳以降に受け取ることができます。
原則60歳まで解約はできませんが、税制優遇のメリットはNISAよりも大きいです。運用益が非課税になるのはNISAと同じですが、拠出した掛金の全額が所得控除を受けることができるからです。所得控除とは、所得税の計算において課税対象から外れることを意味しています。途中解約ができないですが税制メリットが大きいため、老後資金を確実に増やしたい場合に、iDeCoが適していますね。
なお、NISAもiDeCoも、投資による資産形成である以上元本割れリスクは有しています。ただし、税制優遇がある分、元本割れリスクが抑えられることは確かです。
自己資金以上の投資ができるFX
ドルや円など、各国の通貨を取引して為替レートで利益を上げるのがFX(外国為替証拠金取引)です。ドルが安い時期に円でドルを買い、ドルの価値が上がったら売れば利益を得られる仕組みです。この例であれば、購入時よりも円安(ドルの価値が上がった)になった場合に利益が出ることになりますね。
FXでは、FX会社に担保となるお金を預けます。このお金を「証拠金」というのですが、FXでは証拠金以上の取引をすることができます。これを「レバレッジ」といいます。証拠金以上の取引ができれば、少ない自己資金で大きな利益を得られますが、その分損失時の金額も大きくなります。相場を読み違えると大きな痛手を被るので注意が必要です。
★ FXが向いている人は
FXの売買方法は複雑です。ただでさえ為替の動きを読むのは難しく、ちょっとしたタイミングのズレや売買方法のミスが命取りになる可能性があります。仕組みをきちんと理解し、相場をしっかり見通せる人が行う投資だといえるでしょう。
加えて、最初は低レバレッジで始める余裕も欲しいところです。レバレッジはFXで認められた、適切な投資手法ではありますが、やはり最初からレバレッジを多用するのはリスキーでしょう。レバレッジを効かせるのはFX上級者になってからが望ましいといえます。
現物投資の代表 不動産投資
不動産投資はマンションを購入したり、アパートを建設したりして、賃貸収入を得る投資の種類です。不動産は高額なため初期投資は大きくなります。初期投資が自己資金で賄えなければ、不動産投資ローンを組むことになるでしょう。未経験者にとっては選択しにくい投資方法かもしれませんが、人気物件を取得できれば長期的に家賃収入を得ることができます。
不動産投資は独自の注意点も多いので順番にご紹介します。
契約書に貼る印紙税や登記手数料、司法書士報酬など
購入の初期費用は高額なので、通常は不動産投資ローンを利用します。その際、所定の審査があり、担保物件や契約者の属性(年収や信用など)を審査されます
購入後も固定資産税や修繕費・管理費等が発生します
入居者がいなければ、家賃収入は入ってきません。空室の場合でも、維持管理費はかかってくるので空室時は保有の負担が大きくなります
地価変動で収益が大きく変わる
上述した注意点の他にも、地価の変動が不動産投資の業績を大きく左右します。地価が上昇して利益が生じる可能性がある反面、地価下落リスクもあります。地価が下がれば、たとえ売却したとしても売却損が発生することもありえます。売却先が見つからなければたとえ損を抱えていても、保有し続けなければなりません。
株式投資や投資信託なら、向いてないと感じたら売却して投資を終了できます。購入した金融商品が下落しても損切すればそれ以上の損は発生しません。しかし不動産投資の場合、手放すのも簡単ではないことを知っておきましょう。
★ 不動産投資が向いている人は
初期投資のために融資を受けるとしても、ある程度の頭金は必要です。空室時は融資の返済を自己資金から支出する必要があります。このことから、不動産投資は資金力がある人に向いている投資といえそうです。初期投資を回収するまでに数年かかることが見込まれるため、投資に対する長期的な視点も必要ですね。短期の売却もできますが、思うように転売できるとは限りません。じっくり投資を考えられる人が行うといいでしょう。
新しい投資の種類 太陽光投資
自宅の屋根やその他の土地に、太陽光システムを設置し、売電収入を得るのが太陽光投資です。太陽光発電システムを導入する費用が必要ですので、不動産投資と同じく初期投資が大きいといえます。ただし、10年間(事業用は20年)は電気の買取価格を固定化するFIT(固定買取制度)を利用できるのが大きな魅力です。10年(20年)経過後の売電価格がいくらになるかが不透明ですが、FIT期間中は10年(20年)間の収益見通しを立てることができます。
将来の買取価格が確定していない点は不安材料ですが、近年は環境や社会への貢献度を投資判断に含めるESG投資が注目されています。国内でも、日本最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人がESGを投資プロセスに組み入れることを表明しました。エコエネルギーである太陽光発電は、収益性とは別の価値も評価されていくかもしれません。
★ 太陽光投資に向いている人は
初期投資を抑えれば投資の収益性は増します。そのため土地がある人が適しているでしょう。土地がない場合でも、地価の安い土地を探せれば問題ないですね。また、自宅に設置する場合は、売電収入だけでなく自家消費することで電気代が削減できる点もメリットになります。
なお、太陽光投資事業に小口投資する方法もあります。小口投資なら、「太陽発電システムに興味はあるけれど、初期投資を抑えたい」という人にも適していますね。
多くの投資の中から適したものを選ぼう
投資の種類は多いです。一般的には投資信託や個人向け国債が入りやすいとされていますが、投資である以上、リスクはゼロではありません。また、好みや嗜好にも左右されるので人によって「いい」投資の定義は違ってきます。最初から選択肢を絞るのではなく、たくさんの投資の種類を知り、多くの中から最適なものを選択していきたいですね。