お金ライフプラン

生涯独身(おひとり様)で突き進む場合のマネープラン

老後破綻や老後破産が決して絵空事ではなく、私たちの身近に迫っています。とくに深刻なのは、結婚をせずに生涯独身を貫く“おひとり様”の老後。頼りになるのは自分の収入と預貯金などの資産だけです。一体、老後の生活にはいくら必要なのか、そしていくら貯めておけば大丈夫なのでしょうか。

ベストセラーとなった「おひとり様の老後」

「長生きすればするほど、みんな最後はひとりになる。結婚したひとも、結婚しなかったひとも、最後はひとりになる。女のひとは、そう覚悟しておいたほうがよい」

これは、2007年に発売され75万部のベストセラーとなった、女性学・ジェンダー研究の第一人者として知られる上野千鶴子さんの「おひとりさまの老後」の書き出しです。上野さんは、「子供がいない、おひとりさまの私が先々、安心して生きていくには“どこに住んでどう暮らすか・人とのつき合い方やお金はどうするか・どんな介護を受けるか”。当時、漠然と不安に感じていたことを調べようと思ったのがきっかけ」で、この本を著したそうです。
この本から勇気をもらい、“おひとり様”であっても楽しく老後を過ごすために、若いうちから準備を進めている人も多くなったそうです。では、どんな準備をしておくべきかをみていきましょう。

おひとり様のお金事情

“おひとり様”サラリーマンの厚生年金支給額は?

定年まで会社勤めをした人の場合、定年後の主な収入は年金となります。厚生労働省の年金受給モデルでは、夫の平均月収(賞与含む)が約43万円、妻が専業主婦の世帯の場合、月々22万円(妻の国民年金6.5万円を含む)の年金が受け取れる予定となります。同平均月収のおひとり様の場合では、月々15.5万円となります。
ただし、今後の加入状況の変化や経済の状況などによって年金額は変化します。また、年金の支給額は会社勤めをしていた期間と給与の金額で変わるため、貰える金額は人によって違います。現在、厚生年金を貰っている約1,568万人の平均支給額は月々「145,638円」です。

“おひとり様”高齢者の1ヵ月の生活費

総務省の「家計調査年表」(平成26年)によると、無職の高齢夫婦世帯の場合、1ヵ月の生活費はおよそ27万円かかるといわれており、おひとり様の場合は16万円となっています。ただし、これは生活するのに必要な費用のみの金額です。
高齢者が避けて通れない健康問題。病気やケガなどで通院や長期入院をしなければならないかもしれません。この費用に医療費がプラスされることも想定しておく必要があります。

また、賃貸住まいか、持ち家か、ローンは終わっているか、なども支出には大きな差が出てしまいます。

理想は、マンションであれ戸建てであれ、定年までにローンを完済しておくことです。退職金でローンを完済しようと思っている人もいるかもしれませんが、退職金は老後の生活を支える大事な資金ですので、そのまま残しておくことが賢明でしょう。

想像以上にかかる老後の生活費用を支えるものは?

年金だけで老後をエンジョイすることは難しいと、多くの方が指摘しています。その不足分を補うのが退職金や現役時代に貯めていた預貯金です。
例えば、家のローンを完済していたとしても、修繕費やバリアフリーなどのリフォーム費用がかかってきます。
「雨風さえ凌げればいい」と考える方もいるかもしれませんが、年齢を重ねると足腰が弱り、段差のある室内でつまずいて寝たきりになってしまうお年寄りも決して少なくはありません。
また、ローンが終わるころには築年数もかなり経っているため、修繕が必要な箇所は次々と出てきます。想像している以上に、老後の生活にはお金がかかってしまうのです。

約7割の“おひとり様”高齢者の生活は“ゆとりなし”

“おひとり様”高齢者は、男女とも増加してきています。内閣府の『平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(全体版)』によると、2010年(平成22年)には男性が約139万人、女性が約341万人で、高齢者人口に占める割合は男性11.1%、女性20.3%となっております。1980年(昭和55年)には、男性が約19万人で、女性が約69万人、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたから、ここ30年でおよそ2倍に増加しているのです。

さて、その高齢者の“おひとり様”世帯の経済事情を『高齢者の家族と世帯 平成29年版高齢社会白書(内閣府)』で見てみると、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」は、わずか8.7%で、「家計にゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」が21.7%、一方、「家計にゆとりがなく多少心配」が34.8%、「家計が苦しく非常に心配である」が34.8%となっています。

つまり、7割近い“おひとり様”高齢者は、ゆとりのない生活を送っているというのが現実なのです。

40代で保有資産ゼロは約4割!

大企業に勤めていても、中小企業であっても、決して老後は安泰ではありません。ましてや自営業やフリーランスとなれば、尚更です。老後を年金だけに頼ることは、もはや難しいといっても過言ではないでしょう。

少子高齢化は、これからますます進んでいきます。それに伴い、年金の給付水準も引き下げられる可能性があります。加えて年を重ねるごとに医療費などの負担は重くなっていきます。大きな病気にでもなれば、預貯金はすぐに底をついてしまうかもしれません。

ちなみに、“おひとり様”の金融資産(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査・平成26年」)は、40代で657万円、50代では1287万円が平均保有額です。また、保有資産ゼロは、40代でも39.5%いるそうです。

備えあれば憂いなし

今、あなたが思い描いている老後の生活は、食べるのがやっとの生活ではないはずです。現役時代にできなかった夢の実現や、趣味に打ち込んだりと、ゆとりある満ち足りた生活ではないでしょうか。

では、そのために必要なことはなんでしょうか。
それは「必要であると想定している金額以上に」できる限り老後に備えて資金を蓄えておくことです。そして、できる限り早く取りかかることが大切なのです。まさに“備えあれば憂いなし”です。

老後の生活を支えるのは年金と預貯金が基本となりますので、もちろん預貯金は多いに越したことはありません。
ただ、ちょっとここで考えてみてください。老後のためだけの”超節約生活”に満足できるでしょうか。

現役時代から我慢を重ね、リタイア後まで我慢を強いられるような生活では、夢も希望もありません。
しかし、よほどの高給取りでなければ、お金に困らないほどの老後資金を貯め込むことなどほぼ不可能でしょう。

まとめ


“おひとり様”であっても、老後を快適に過ごすためには、できる限り老後に備えて資金を蓄えておくことが必要となります。特に女性の場合、男性に比べて平均寿命が長いため“おひとり様“で過ごす期間も長くなり、それだけ豊富な資金が必要となります。

老後資金対策として、預貯金以外にも確定拠出年金や個人年金、積立タイプの生命保険、株や投資信託など、老後資金を貯めるための資産運用には様々な方法があります。昔から“善は急げ”といわれてきましたが、老後資金対策はできるだけ早く取りかかることが大切です。まずは自分にあった資産運用方法を見極め、老後に向けて資金を増やしていきましょう。

【 参考図書 】
「知ってトクする年金の疑問71」(井戸美枝著/集英社)
「退職金は何もしないと消えていく」(野尻哲史著/講談社)
「いったいどうなる?どうする?磯野家の老後」(磯野家の老後編集部編/ゴマブックス株式会社)